タイトルにある曝露療法(ばくろりょうほう)というものをご存知ですか?
現在治療中の方などでこの言葉を聞いたことがある方がいるかもしれませんが曝露療法とは
不安や恐怖を覚える場所や状況にあえて直面させる方法です。
広場恐怖になるような状況(電車、人混みの中に身を置く、家で一人きりになる等)への曝露は恐怖感を克服する上で非常に有効な方法とされています。
- 恐怖を覚える身体感覚への曝露
パニック障害のある人は、めまいや息切れなどのパニック感覚に襲われることを恐れているため治療では恐怖を感じなくなるまでそのような感覚に身を晒す練習が行われます。
広場恐怖をもたらす状況を回避することで生じる問題
- 回避してしまうことにより自分が恐れている状況は本当は完全に安全なものだという事実を知ることが出来なくなります。
- 回避行動を取り続けると、今後同様の場面に直面した時にも回避行動をとってしまい回避しなくても大丈夫なのにそのことを知ることが出来なくなります。
- その結果「以前は出来ていたのになんで今はダメなんだ」と苛立ちや自分に対して情けないという気持ちになり自信がなくなってします。
- 回避行動を取ると一時的に不安、恐怖の軽減になりますが長い目で見ると苦手な場所への克服にはなりません。
自分が苦手としている状況や場面、場所について特定し苦手な順に順位をつけましょう。
- またその際に友達や家族と一緒だと恐怖感が軽減されるか。
- たとえば電車が苦手なら各駅停車や急行などによって恐怖感が変化するか。
- 人混みに関してもショッピングモールは苦手だけど遊園地や観光スポット等によって恐怖感の違いはあるか。
これらを合わせて特定することで恐怖感を増減する要因についても知ることができます。
※曝露療法を行う方は訓練によって悪化する可能性のある身体的な疾患がないことが前提条件です。また主治医に相談してから行うことをお勧めします。また実施してみて感覚が強烈に感じる場合は中止して下さい。
苦手な場所の順位の低いところから曝露療法を実施していきそこに行っても症状や安全確保行動(すぐに逃れる場所をあらかじめ探す、頓服をすぐ飲めるように準備しておく等)を取らなくても過ごせるようになったら次にステップアップしましょう。
パニック症状を誘発する活動の回避
上記のような苦手としている活動や避けている行動はありますか?
- たとえば運動するとドキドキしてしまいなるべく運動はしない。
- カフェインの入った飲み物は飲まない。
- 一人では出かけない。
こちらの例えであげたような行動も回避を続けているといつまでも恐怖の克服には繋がらずその活動や行動を避け続けてしまいます。
こちらも上に書いたような苦手と感じる場所に曝露する訓練と同様にあえて立ち向かい自身が大丈夫なことを自覚するまで行います。
たとえば運動をして心拍数が上がりドキドキしてそれがパニック発作のスイッチになってしまうとします。
最初はゆっくりとしたウォーキングから始め、慣れてくれば軽いジョギングに変えていったりそれを繰り返し行うことでドキドキしても大丈夫と認識出来れば運動をしても発作も起きなくなってくるでしょう。
上記に書いたのはあくまで例えです、苦手な活動や行動または場所についても個人差があるのでまずは自分が苦手とすることを再度振り返り特定することが大事です。
また曝露療法を実施する上で自身が「治したい」「苦手とする場所に行ったり苦手な活動を克服したい」と気持ちを強く持つことが大事です。「良くならない」「自分には無理だ」と思っていてはいつまで経っても克服は出来ません。
パニック障害は稀な病気ではありません、100人に2〜3人と比較的ポピュラーな病気です。同じ症状で悩んでいる人もいますが同時に早く良くなりたいと頑張ってる人もいます。自分だけではないんだ、同じように苦手を克服しようと頑張ってる人も居るんだと思えばモチベーションも少しは上がると思います。
曝露療法に関する本も出ています。そちらに更に詳しく載っていると思いますので興味がある方は購入してみても良いと思います。
おわりに
実際筆者も苦手とする場所にあえて行き大丈夫だと自覚するまでに結構な期間を要しました。
最初は腹部不快感や嘔吐、心悸亢進等も見られ頓服を飲むこともありましたが今ではその場所に行ってもドキドキすることもなく3〜4時間その場に居ても大丈夫なようになりました。
やはり自分自身が「大丈夫、ここに居ても何も起こらない」と自覚することが広場恐怖の軽減に繋がると思います。
広場恐怖を感じるところに行くのは最初はものすごい不安や恐怖に襲われるかもしれません。まずは家族や友人等に付き添ってもらいましょう。
症状の経過から回復を感じ、徐々に一人で行ける回数が増えるようになると症状の軽減や自信もついて来て回復を実感出来ると思います。
自分自身の回復は本人ももちろん嬉しいことですが、身近で普段からあなたの症状を見ている方は尚更あなたの回復を喜ぶでしょう。
苦手な場所や活動を克服して行動範囲を拡大し病気に制限されない人生を一緒に楽しみましょう。